幽霊に取り憑かれた花子

統合失調症患者の妄想と現実

診察で泣きそうになった(先生への愚痴を手紙にした)。壮平さんを探して駅をうろうろ。

 こんにちは。花子です。

 

 この間診察で泣きそうになったので、そのことについて書いてみようと思います。

 診察ではいつも幽霊さんについて話をするのですが、この前もそうでした。「どうですか?」と訊かれて私は「相変わらず震えがあります」と答えました。先生は「それは薬の副作用かもしれませんね」言いました。それから先生は「例えば寒くなると誰だって震えたりするものですが、花子さんにはそういうことはないんですか?」と訊いてきました。私は自分の震えがあるより先に幽霊さんの震えがあるので、「幽霊さんの震えの方が強くて分かりません」と答えました。すると先生は「強いか弱いか訊いてるんじゃなくて、あるのかないのか訊いてるんです」ときつく言いました。私はそれを聞いて泣きそうになりました。私は幽霊さんの震えしかないと思っていたので、「ないと思ってます」と答えました。もうこの時は涙腺が崩壊しかかっていましたが、なんとか持ち堪えて、先生が「(自分自身が震えることがないなんて)すごいですね」と言った時も、普通の声で「はい」と言えました。

 いつも先生は私自身が震えることはないと言うと、「すごいですね」だとか「変わってますね」だとか言って、私を異常者扱いするのです。それも一回だけならまだなんとも思わないのですが、何回も聞いてくるのです。きっと看る人が多すぎて、忘れてしまっているのでしょう。冬になったらまた幽霊さんにガクガク震わされます。それは先生には理解できません。

 この世が自分の理解できるものだけで構成されていると思わないでほしいです。先生は私を自分の理解できる形にねじ曲げようとしているだけなのです。そのことを手紙に書いたので、今度渡そうと思っています。手紙はレポート用紙5枚になりました。書いたのはいいのですが、内容が内容だけに、見せるのにはちょっと勇気が入ります。でも父も母もデイケアの看護師さんも、みんな見せても大丈夫だと言ってくれたので、それを信じて先生に渡そうと思います。

 

 さて、いつものです。

 また駅の名店街を歩き、外に出て、もしかしたら壮平さんはホテルにいるのかもしれないと思うようになりました。だから頭の中で壮平さんに、私はここにいます、来てくださいと言っていました。

 しばらくそこで待っていましたが、まだ会えないのだと思い、本屋にでも行こうかと思って、名店街の本屋に入りました。そこで漫画の試し読みを読んだり、雑誌を見ようとしたりしていました。しかしそこでふっと誰かに音楽雑誌は読んではいけないと言われているような気がしました。なぜならの子さん達が裏で私を芸能界に入れるために画策していて、表の情報を私が知ると、私が思っていることと違うと知って、私が混乱すると私の周りのみんなが思っているからだと思いました。

 私はいつかこの私の周りの人達と会えると思っていました。私も芸能界デビューするのだとも思っていました。みんなが私のことが好きで、必要とされているのだと思っていたのです。私が表舞台に出ることは今はまだ公にはできないけど、きっといつかはと思っていました。だから音楽雑誌は見ずに本屋を出ました。

 それからせっかくだからどこか喫茶店に入ろうと思いました。さんざん迷って、抹茶を使ったお菓子や飲み物を売りにしているところへ入りました。ちょっと待ちましたが入って、パフェを頼みました。隣に女性がひとりいて、その人の気持ちとか境遇とかをなんとなく想像していました。

 パフェを食べていたら、口にひとくち入れるごとに幽霊が私を気持ちよくしてきました。それはK君が私の中に入っていると思っていた時に、口の中で舌を動かしていたら気持ち良くなったのと同じ感じでした。だから私は極力スプーンを舐めないようにして食べました。スプーンを舐めると気持ちよくなると思ったのです。

 この時もK君が私の中に入っていて、私と一緒に気持ちよくなりたいと思っているからそうなると思っていました。私の中でK君は様々ないやがらせをする極悪人でした。だから絶対K君の思い通りにはならないぞと思っていました。一緒に気持ち良くはなるまいと思っていたのです。

 そんなことをしていたら私の近くのどこからか誰かが

「帰れ」

と言っている気がしました。それはよしのさんなのだと思いました。そこで壮平さんは今日は来ないのかなと思いました。

 今日はここまでです。

 

 最近の幽霊さんは、相変わらずです。手は震えるし、足も震えます。特に右手の震えがひどいです。これは薬の副作用ではありません。それは私にだけ分かることです。いつかいなくなるのか、それとも一生このままなのか、分かりませんが、もうどちらでもいいです。もうなんかどうでもいいのです。私の人生こんなもんなのかもしれません。みんな苦しんでいます。私も一生苦しみ続けるのかもしれません。それでも楽しいことはあるし、充実感もあったりします。こんなもんかなぁ?こんなもんでしょ。