こんにちは。花子です。
私の家にはテレビがなく、新聞もとっていません。だから今私はこの世界から一人孤立した状態になっています。ただ食べていくために毎日を過ごしているだけ。そんな感じです。本当に私は生きていけたらそれでいい、他に何もしたくない、そう思っています。たぶん死ぬまでこんな生活を過ごしていくのだと思います。自分の想像もつかない人生なんてありえないのです。でもほんの少しだけ自分が有名になったら、なんて考えないこともないですが、それはこの世のほとんどの人がする妄想と同じなのです。そして多くの場合それは実現しません。私も同じなのです。
私は昔からよく妄想をしていました。漫画の中に自分を登場させて、漫画の主人公のようになるのです。でも現実は味気ないものです。私は人の影に隠れて、目立たないように生きてきました。時には悪口を言われることもありました。私には言い返すことができず、今さえ耐えれば絶対大丈夫、なんて思ってその場をやり過ごしていました。でもそういうのが積もり積もって、私は心を病みました。過去を思い出しては、今の自分なら絶対こうするのに、なんであの時はああするしかできなかったのだろう、なんて思いながら後悔ばかりしていました。後悔は誰でもします。反省もみんなしています。それでも私は特別、そう思って高校卒業から2年間ほどは一人自分の世界に引きこもり、ほとんど誰とも話をしませんでした。ただ自分の思いをノートに書き綴っていただけなのです。でもそれが功を奏して、私はまた人と関われる人間に戻りました。そして私は特別とは思わなくなりました。
私はみんなのように大学には行けず、アルバイトすらできず、何もできませんでした。みんなのようにできないのならせめて人とは違う才能があればいいのになんて思いましたが、何の能力もなく、何もできない人なんて、この世にいっぱいいるのです。私もそういう人たちと同じなのです。私の生きられる場所はこの家にしかなく、私にできることはただの家事手伝いくらいしかありません。結婚する気なんてさらさらないし、今住んでいるこの地域から出る気はありません。今の家族が一人一人欠けていって、私が最後に残り、私ですら消えてしまう、そんな未来しか見えません。でもそれはそれでいい気がしています。私は別に何も考えなくても生きていけるのです。何も成し得ていない私は何をしてても何もしてないのと同じです。人はこんな私を見て、高卒ニートのゴミ、なんて思うのでしょうか、そんなこと思う人は私の周りには一人もいないのですが。
今の私には自分のためにできることしかありません。家族のためならできますが、この社会のために何かをするということは今の私にはできません。いつか私の考えたことが人のためになればなんて思わないでもありませんが、私にはそんな才能がない気がしています。ただ自分の考えたことが自分しか知らずにいるのはもったいない気がして、このブログでみんなに見てもらえたらと思うのですが、それもそんなにうまく行きません。私はこの世の片隅でひっそりと生きていくしかないのでしょうか。
まずは詩です。
「歴史」
私達は今歴史の中を生きている
生きてるだけで、それが歴史として後世に伝えられる
歴史とは過去のものだけではない
過去から続く今も歴史の一部だ
私達は生まれた時からこの世を作る雑多な人達のうちのひとりだ
その雑多な人達というのが、今この瞬間私達の歴史を作っている
でも本当に私達が歴史を作っているのか?
そんなことを考える人はほとんどいないだろう
みんなただ自分の人生を必死に生きてるだけだ
遠く離れたところから自分を見る人は少ない
この社会でのどういう位置付けか、考えることはあまりないだろう
全体像が見えてないことが多い
私達がこの社会を動かしていると感じる人はどれくらいいるだろう
人生について盲目な人はたくさんいる
ただ目の前のことに一生懸命で、広く物事を見られる人はそういないだろう
でもそういう雑多な人達がひとつの固まりとなって、この社会を作っている
その固まりであるみんなが動いて歴史が刻まれる
人ひとりに小さな歴史がある
そういうのが集まって大きな歴史になる
たいていの人はそれほど歴史を動かさない
それでも歴史は動いている
みんなただ生きているだけだ
歴史を作っているなんて思いもしない
みんな何かに向かって必死になっているけれど、それがどういうことか分かっている人は少ない
私だってただ生きているだけだが、私の人生というひとつの歴史を刻んでるなんて、普段は思いもしない
でも本当に私達はこの社会の一部になっていて、世界とともに変化しているのだ
その変化を感じている人もあまりいないだろう
物事は変化をするのが当たり前で、常に変化しているのだから
みんな現れては消え、現れては消えしている
私もいつかこの人生という名の歴史を完成させることになるのだ
私も大きな歴史の一部になりたいと思うが、もうなっている
世界を大きく動かすことはできなくても、私が行動するだけで、世界は少し変わっていく
みんながただ自分のために行動するだけで、社会を動かしていることになっている
いまこの瞬間がどんな歴史になっているか、今はまだ分からない
でもいつか振り返ってみた時に、この今は歴史として認識されているだろう
それがどういう形かはまだ分からない
私の人生という歴史は、いつか振り返った時に、きっといい形をしているはずだ
そうなるように今を一生懸命生きているのだから
歴史は常に刻まれている
みんなその中を生きて死んでいくのだ
詩はここまでです。
さて、いつものです。
叫びがひどくなってくると、父と母が来た時も叫んでいました。それを見た看護師さんは
「ご両親が来られたら叫ぶので帰ってください」
と言いました。父と母はしぶしぶ帰りました。でも建物の外に出ても私の声が聞こえていたようで、
「あれ花子の声だよなぁ」
と父は母に言っていたそうです。
そんなことがあったのと、点滴ばかり打たれた腕が見るに耐えないというので、両親はR病院への転院を考えるようになりました。O病院に入院する前にすでに考えていたようで、日付も決まっていたのですが、O病院に入院することで一旦白紙になりました。
父と母はどうしたら転院させられるのか相談するために、入院する前に通っていたT神経科の先生のところに行きました。
父が全部言うと言ったので、母はそれにまかせるつもりでいました。しかし父は
「病室がざわついていましてね」
と言うだけで、他に何も言いません。先生は
「それだったら病室を変えてもらえばいいじゃないですか」
と言いました。それだけで会話が終了したので、母は思ってることを全部先生に言いました。
先生は
「主治医の先生には思ったことは全部言ってください」
と言ったので、父と母はそうすることにしたようです。
「ぜひお二人で」
と先生は付け足しました。
母がI病院の主治医の先生に
「治療方針はどうされるおつもりですか?」
と訊くと、先生は
「同じことの繰り返しです」
と言いました。前回の入院時にこの治療方法でうまくいったと思ったのでしょうか。実際はたまたま幽霊が出ていった時と薬が効いてきたと思われる時とが重なっただけだったのですが。
それから母は先生に
「点滴の穴だらけになった腕を見て、何とも思わないんですか?」
と訊きました。すると先生は
「やむをえないですね」
と言いました。父と母は先生のこれらの返答を聞き、これはもう転院させるしかないと決意を固めました。
そのことを先生に言うと、先生は
「私としては花子さんをもう少し見たいんですけど」
と言いました。まるで私を実験台にしているかのようでした。父と母も同じようなことを思ったようです。
今日はここまでです。
最近の幽霊さんはだいぶおとなしくなった気がします。震えも減ってきました。ちょっと疲れてももうしんどくならされることはありません。このままいなくなってくれれば、あとは自分の人生に集中できる気がします。早くいなくなってくれればなぁ。